有明海におけるエツの生態

 エツの産卵は6月から7月にかけて筑後川の河口から上流20km付近でします。 ふ化した稚魚は8月頃まで河で生活し、10cm程度になると有明海に出ていくことが知られていますが、その後の 移動生態はわかっていませんでした。有明海では各種の漁業でエツが漁獲されていることから、 操業場所と漁獲状況を定期的に調査しました。その結果、夏から秋にかけては筑後川河口周辺、秋から 冬にかけては六角川河口周辺、翌年の春に竹崎周辺で多く漁獲され、春から夏にかけて再び筑後川河口で 漁獲されることがわかりました。これらの結果から海に出たエツは有明海湾奥部の西側をきしよりに西回りに 回遊し、1年後には15〜20cmになり再び筑後川河口周辺に戻ってくることが明らかになりました。

(有明海研究所資源増殖課)

エツ増殖技術の開発

 下筑後川漁協ではエツ増殖を図るため、受精卵放流を実施しており、研究所では受精卵放流の効果を より一層高めるための技術開発をしています。受精卵放流では、人工受精時に必用な雄が漁獲されないことが あるため、生死の保存技術を開発し、家庭用冷蔵庫で約10日間保存できることを確認しました。また、受精方法に ついては従来の乾導法より湿導法の方が適していることもわかってきました。種苗生産では、20日頃に大量へい死 していましたが、投餌方法等を改良することで生残率を上げることが出来、順調に成長しました。

(内水面研究所)

エツ人工種苗の成長

Vol.10 Topへ