ノリの色落ち原因となる珪藻プランクトンの生態を把握
珪藻赤潮の発生に伴うノリの被害を軽減するためには、赤潮の発生と終息をいち早く察知して漁業者のみなさんに通報することが大切です。このためには、原因となるプランクトンの生態を種類毎に把握しなければなりません。
有明海研究所では、平成12〜14年度にかけて、底泥中に存在する珪藻プランクトンの休眠期細胞(タネ)の分布と消長を有明海で初めて調査しました。その結果、スケレトネマ コスタタム、キートセロス属、タラシオシーラ属、アステリオネラ属の休眠期細胞の出現が確認され、色落ち原因種として有名なユーカンピア ゾディアカスやリゾソレニア属の休眠期細胞の出現は確認されませんでした。
表は、福岡県有明海区における過去の珪藻赤潮発生状況をまとめたものです。これをみると、休眠期細胞形成種の主な赤潮発生時期は、ノリ育苗期と秋芽網生産期と重なり、1件の平均発生日数は8〜11日と短めです。一方、ユーカンピア ゾディアカスやリゾソレニア属の赤潮発生時期は冷凍網生産期と重なり、日数は37〜65日と長めです。
ノリ色落ち被害は、珪藻赤潮の発生日数が長くなるほど拡大します。休眠期細胞は海水中の栄養塩濃度の低下や天候の悪化などで形成され易いのですが、ユーカンピア ゾディアカスやリゾソレニア属はこういった条件下でも休眠期細胞を形成しません。有明海における珪藻赤潮発生日数の長短は、休眠期細胞形成の有無という生態的な違いによって決定されていることが考えられます。
(有明海研究所のり養殖課)

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キートセロス デビレ の栄養細胞(左)と休眠期細胞(右) |
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ユーカンピア ゾディスカス(左) と リゾレニア セティゲラ(右) |
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