黒ゴイの成熟・産卵コントロール技術を開発
本県は、黒ゴイ(食用ゴイ)の全国有数の産地です。しかし、長びく景気低迷等により、消費と魚価の低迷が続き、かつて(昭和60年)1,700トンあった生産量も今や(平成13年)400トン余りと大きく減少しています。このような状況にあって、養殖漁家は生産コスト割れもある厳しい経営を余儀なくされています。そこで、研究所では、生産コストを下げる一つの方法として、通常では、春に産卵・ふ化して2年半〜3年かかる生産期間を、早期(秋)に採卵し、翌年の春〜初秋の好成長期を最大限に利用して、2年くらいに短縮しようという技術開発を進めています。
一方、黒ゴイは、いろいろな化学物質が生物に与える影響を調べるための実験稚魚に指定されています(「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づく)。現在県下の一漁協がその受託生産を行っています。しかし、法律に基づく実験法であるため、稚魚には一年を通して一定のサイズと品質が要求されます。これに対応するには、年1回の産卵だけでは到底不十分で、年複数回の採卵が必要となります。そこで、研究所では春夏秋冬の年4回の採卵技術の開発も進めています。
これら二つの目的をもった研究は平成14〜16年度の3カ年計画で行っています。これまでのところ、親魚を水温と日照の調節によって養成し、秋季採卵だけでなく、春夏秋冬の四季採卵や同一親魚からの年2回の採卵に成功しました。また、従来から♀の熟度鑑別は触診で行われていましたが、チューブを使って卵巣卵を採取(カニュレーション)して成熟度を調べ、ホルモン剤を投与する時期や産卵時期を予測する方法も開発しました。
16年度は、これら開発した技術の再現実証試験を行うとともに、「黒ゴイの成熟・産卵コントロール技術マニュアル」として取りまとめ、生産者に普及を図っていきます。
(内水面研究所)

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カニュレーションによる卵巣卵の成熟度検査 |
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いかかご漁業における終漁時期決定手法の検討
今漁期も、コウイカを対象としたいかかご漁業が2月より始まりました。いかかご漁業は地域によってその操業期間は異なっていますが、その終了時期は小型底曳網やごち網漁業が始まる時期となっています。すなわち、いかかご漁業の操業期間はコウイカの資源実態にあわせて決められているのではなく、色々な漁業を同じ海域で行うための都合によって決められていることになります。
そこで、毎年産卵親魚を安定した量残していくやり方、すなわち毎年安定した漁獲量をあげていくために必要な産卵親魚を残すための終漁時期を決める手法の検討を行いました。
モデル地区として、水揚げ仕切書の電算処理データがそろっている糸島地区を選び、最尤法という新たな手法を用いた統計モデルにより平成8年度以降の初期資源量(いかかご漁期前に生息しているコウイカの量)を推定し、その年に漁獲された量を差し引いた値を求めてみました(表)。この値はいかかご漁業が終了した後に海域に産卵親魚として残っているコウイカの量になります。
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左の図に示すように、その年の残存量と次の年の資源量の間には比較的強い関係が見られます。右の図に残存量と翌年の漁獲量の関係を示しましたが、漁獲量は気象、海況によって左右される部分があるものの、それでも残存量との間に関係が見られました。 |

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そこで、この関係を使って昨年度より糸島地区において漁期前の資源量とその年の漁獲量の予測を始めました。昨年度は漁獲量予測値82トンに対し実際の漁獲量は85トンとほぼ予測したとおりの漁獲が見られています。
今漁期は約100トンと予測し、漁期前に開催されたいかかご漁業者代表者会議において報告しました。これまでは昨年をやや上回る漁獲が続いており、今漁期の糸島地区におけるいかかご漁業は昨年よりやや豊漁と期待されます。
今後はさらにデータを積み重ね、予測値の正確性を高めるとともに、毎日の漁獲量を集計するシステムを関係漁協と協力の上整備し、持続的漁獲を目的とした適正終了時期を決定するシステムを構築していきたいと考えています。(研究部漁業資源課) |
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