なみなみ通信Vol.40


ハヤ(オイカワ)の資源回復にむけて

 
−産卵場造成と種苗生産技術が完成−
 ハヤ(オイカワ)は筑後地方等では甘露煮で親しまれ、アユについで生産量も多く内水面漁業で重要な資源ですが、その漁獲量は平成8年頃には150トン程度あったものが近年100t前後となっています。
 このため、内水面研究所ではハヤ資源を人工的に増やすため、産卵場造成技術と人工種苗生産技術の開発に平成16年度から20年度までの5ヶ年間で取り組んできました。
 今回はこの両技術開発での成果の概要を以下に紹介します。
 増殖場造成技術では、従来からある河床に直接産卵基質(砂利等)をまく方法に加え、今回、ホームセンターなどで誰でも手に入れられる材料で、簡便に造成できる移動式の人工産卵場造成技術を開発しました。従来の河床に直接産卵基質(砂利等)をまく造成法は、河川の増水で流失するなど1シーズンで機能しなくなることも多いのですが、移動式は、産卵させる時以外は川から揚げておけば繰り返し使用でき、また、この人工産卵場はアユも産卵することが確認出来ており、今後他魚種での産卵場造成への応用の可能性もあるなどユニークで実用性が高い技術を開発することができました。
 人工種苗生産技術では、産卵親魚養成、採卵、仔・稚魚育成の一連の技術を開発しましたが、特に事業化の前提となる計画的に大量採卵できる技術と省コストで仔・稚魚育成できる配合餌料のみでの育成法の開発に成功するなど実用化への課題を解決できました。
 人工的に魚の仔・稚魚を育てるときに大きさに差があると”共食い”によりかなり減耗します。 このため、なるべく大きさをそろえるように育成する必要がありますが、これには、同時に大量の卵を得る必要があります。ハヤは産卵期間が長く、かつ一回の産卵数が100粒程度と、1回に数万〜十数万粒を生むと言われるコイなどにくらべて、大量採卵が難しく、現在までハヤの人工種苗生産が事業化出来なかった理由の一つともなっていました。
 今回、親魚の養成や採卵期の水温コントロール、採卵床設置のタイミングにより数万粒レベルでの採卵が可能となりました。
 また、仔・稚魚育成では、これまでふ化直後にはミジンコなどの生物餌料を与える必要があるとされてきましたが、今回、ふ化直後から配合飼料で飼育しても十分生育する給餌法を開発し、ミジンコなど生物餌料給餌にかかるコストを削減できる、より実用的な技術を開発出来ました。
 今後は、この成果をわかりやすく解説したマニュアルなどを活用して、漁業者のみならず広く関係者にこれら技術を普及し、皆さんの身近な川にハヤが増えるよう取り組みを進めたいと考えています。



完成したマニュアル


(内水面研究所)



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